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 26人が犠牲になった大阪市北区の心療内科クリニック放火殺人事件を受けて導入された、防火設備の改修費補助制度が広まらない。現場のビルには避難できる階段が一つしかなく、被害が拡大した。消防庁や国土交通省によると、同様の建物は全国に約3万棟あるが、制度を使って改修されたのは2棟にとどまっている。

 事件は3年前の2021年12月17日、8階建て雑居ビルの4階で発生。非常口の階段付近で放火され、患者らは階段のない室内奥へ向かい逃げ場を失った。26人の死因は一酸化炭素中毒だった。

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クリニックがあったビルの入り口には鎖がまかれ立ち入り禁止になっている=2024年12月13日午前10時51分、大阪市北区曽根崎新地1丁目

 現場のビルは、消防法で定義された、地下や3階以上に不特定多数が出入りし階段が一つしかない「特定一階段等防火対象物」(特一)。1カ所しかない階段が火災などで使えなくなると、火や煙が充満し、閉じ込められて被害が拡大すると指摘されている建物だ。

 現行の建築基準法施行令では、不特定多数の人が建物に出入りする場合、二つ以上の避難経路の確保が原則義務付けられている。

 ただ、この基準は1974年の施行で、それ以前にできた建物には適用されない。現場のビルは70年に建てられた。

 事件後の2023年4月、国交省は防火設備の改修費を国や自治体が全額または一部を補助する制度を設けたが、導入したのは京都、大阪、堺、福岡の4市(24年11月時点)のみ。実際に改修されたのは、大阪市と京都市の計2棟にとどまっている。

 なぜなのか…

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